合理的な個人プール
2006年に最初のプールのお仕事をさせていただきました。
斜面地に設置をするということで、既製品は使えず、鉄筋コンクリートの構造で検討しました。
設備に関して、大手総合設備工事会社のK社に問い合わせをしましたら、プールの機能を検討する前にキュービクル式高圧受電設備、ポンプ室などの配置を確認されました。
「キュービクル?ポンプ室?これは工場ではなくて、楽しむための個人用のプールですよ」と頭の中が「?」マークだらけに。
なるほど日本でプールと言えば、学校や大型施設の仕事がほとんどで、立派な設備士でも先入観から抜けることができないようです。大型の機械ありきのプールしか想像できないのです。
コスト面でも非現実的であり得ない計画になってしまうのです。
やはり日本では、個人の住宅にプールが設置されているケースは稀で、業者は経験不足、コストもやたらと高い。
もしかしたら、プールの文化が浸透をしている国なら、高い技術とローコストを実現しているのでは、と思いました。
プールの国と言えば、アメリカやヨーロッパですね。実は世界で個人プールの密度がもっとも高いのはアメリカのカリフォルニア州です。では何割ぐらいの家にプールが付いているのでしょうか。
グーグルマップorグーグルアースでカリフォルニアの「palm springs」を覗いてみてください。
https://maps.google.com/maps?q=california+palm+springs&ie=UTF-8&ei=2Ay9Uf7iB8HCkgW_kYDwDg&ved=0CAoQ_AUoAg
住宅街は下の写真のような感じです。
では、プールの付いてない家は何棟でしょうか。
数えられない?
大丈夫、私が数えましたのでご報告します。
43棟の内、2棟はプールが見当たりません。木の下に隠れている可能性もありますけどね。つまり、41棟はプールが付いています。割合で言うと、95%以上です。
では、このプールの国の機械設備は大きいでしょうか?コストはケタ外れに高いでしょうか?高圧電気が必要でしょうか?
いいえ、実は小型の機械です。そして、数百ドル(数万円)でホームせんたーでも購入できます。プラスチックでできているので塩素に強い、耐久性に優れ、メンテナンスも要らない。
プールの主な機能、設備を見てみましょう。
ポンプ:
これは人間の心臓のような役割を果たします。一般的にプールに入っている水を1日3回循環する能力があります。バニシングエッジのプールの場合、1時間でプール分の量を循環する必要があるので、必要に合わせてポンプの種類/サイズを選びます。
ろ過機:
フィルターの役割は循環をしながら、水に入っているゴミ(砂、葉っぱ、髪の毛)を集めて、水を綺麗にする事。個人プールで使えるろ過機は2種類あります。
砂ろ過器:
樽のような水槽に砂がおいてあります。砂の層の上に水が流れて、砂の下から水が回収されるのでゴミは砂の表面に残ります。1週間に1回程度「洗浄」が必要です(落ち葉がないところであれば、2~3か月に1回程度で大丈夫です)。洗浄はとても簡単です。ろ過機の表にあるバルブを操作し、15秒ぐらい逆流をさせながらろ過機本体に含まれている水を排出する。水を20~30リットル捨てることになりますがこのメンテナンスさえ怠らなければ、ろ過器はずっと使えます。部品の交換などは不要です。
カートリッジろ過器:
このタイプのろ過器は、中に紙フィルターが入っています。砂ろ過器よりも更に粒子の細かいほこりもキャッチします。メンテナンスは1年に1度水の循環を止めて、カバーを外して、中にあるフィルターを取り替えます。汚れの程度によっては、子圧洗浄機で洗って、もう一度使うことができます。
塩素機:
ろ過循環をすることで、目に見えるゴミは取り除けますが、目に見えない藻、虫の卵、様々な種類の菌を除去することはできません。水を循環させながら、消毒を行わなければ、水は数日で腐ってしまします。消毒にもいくつかの方法があります。
手動導入:
水質によって色が変化する検査紙で水質を確認しながら、塩素のタブレットをプールに入れる(平均2~3日に1回)。
注入タンク:
ろ過器で水をろ過した後に、液体の塩素のタンクを設置します。タイマーで量を調整しながら、一滴ずつ自動的に水の中に塩素を入れます。
塩クロリネーター:
プールの中に約80Kgの食塩を入れます。(1リットル当たり3.5~4g)。海水(35g/1リットル)や、涙(9g/1リットル)の塩分濃度より低いため、プールの水を舐めても全く感じません。
ただ、濃度は低くても、水には確実に、塩(NaCl)が含まれています。そして、クロリネーターを使って、流れている水を電気分解し、NaとClに分離させます。この分離されたCl(塩素)が、色んな菌をやっつけてくれるのです。マイナスのチャージが弱くなると、近くのNa(ナトリウム)を見つけて、もう一度塩になります。
この循環は永久に続きますので基本的に塩を変える必要はありません。
雨に日などに、砂ろ過機の逆洗浄時、塩水がオーバーフローされることがありますので、塩素機のディスプレーを確認した上で、1年に1度、塩を1kg程度プールの中に入れていただくだけのメンテナンスで済みます。しかも、塩クロリネーターの塩素は天然ですので、目が赤くなったり、水着が変色したりしない、また、匂いも無いので、安心安全でおすすめの設備です。私の知っているプールで、5年以上水を入れ替えないで使っているところは複数あります。水は飲んでも良いぐらい綺麗ですし、災害時にこれだけの水量のストックがあれば安心ですね。
ヒーター:
屋外プールにヒーターを導入するのは、機械の能力的にも、コスト的にも難しいですが、屋内であれば温水プールにすることで利用する頻度は上がるでしょう。お風呂の追い炊き機器のように、ガス式・灯油式のボイラーを循環の中に設置をすれば、少しずつ水を温めて、保温してくれます。 電気式の機械もあります。エアコンの室外機のようなヒートポンプもおすすめです。 また、ほとんど蒸発により熱が逃げて行くので温水プールであれば使用しない間は、表面に浮かべて使用するプールカバーをおすすめします。
特殊用途ポンプ:
普通のろ過循環とは別で、補助的な水循環機能を導入することもできます。たとえば、石を並べて、滝のように水を流したい場合はハイフローなポンプが必要です。水圧は低くても問題ありませんが、水量はたくさん供給できるポンプを選びます。
逆に、ジャグジーの様なマッサージジェットを設置したい場合は、ハイプレッシャーポンプが向いています。また、ミッションの自動車の様に、水量の調整ができるポンプもあります。一つのポンプを使って、循環だけ、或いは循環+掃除ロボット、または循環+ジェット+スプリンクラーのように多機能に使用できます。
プールの形状:
プールは、さまざまのの形とサイズが有あります。規制品(FRP、ライナー)のプールの場合は、決まったパターンの中から選んでいただきます。在来で作る場合(RC、ステンレス、FRP、ライナー)はご希望に合わせて作ることができます。プールの躯体は設置条件、ご予算に合わせてお選びいただけます。例えば、お庭に穴を掘って、プールを埋めるという計画の場合、RCの土留を作る必要がありません。FRPの型を据え付けて、周りに埋戻しをすれば終わりです。 また、土地を有効活用するために斜面地にプールを設置する場合は、RCの工作物が必要になります。この中にFRPの水槽を入れるのはもったいないので、そのままRCの躯体を仕上げて使うとメリットが大きいです。
プールの仕上げ:
FRPプールは清潔感がありますが紫外線、乾燥から守らなければ劣化が激しいです。プールの縁をレンガ、石、タイル、デッキ材で仕上げることをお勧めします。RCのプールはタイル、モザイクタイル、人研左官などで仕上げることができます。人研(人造大理石研ぎ出し)は複数のメリットがあります:
・低コスト
・シームレス
・修理可能
・再生可能(無垢材ですので表面を軽く磨けば新品の様になります)
人研+モザイクのアクセントというコンビネーションがおすすめです。汚れ防止目的でフッ素系の撥水剤コーティングもおすすめします。
スタジオドディチには約7m x 3.5mのプールを500万円以内(設備込み)で作るノーハウがあります。
設置場所はどこでも、例えば、お庭、屋上、テラスの上、地下室でもプールを作る事はできますのでご興味のある方がいらっしゃいましたら、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。
プールは泳ぐためだけのものではありません。季節を問わず、年中楽しむことができる、水盤のある豊かさを、あなたのライフスタイルに取り入れてみませんか。